WEAZER 西伊豆 廻

次世代WEAZERの開発
1号機となったWEAZER西伊豆は、オフグリッドという革新性やデザイン性の高さから新聞・メディアにも多数取り上げられた。宿泊施設としても高単価・高稼働を継続しており、世にオフグリッドを広める上でのプロトタイプとしては、十分な一歩を踏み出すことができた。
その1号機がある西伊豆 舟山集落において、更に特別な景観のある場所と出会うことができ、そこが次世代WEAZER開発の舞台となった。
Only Oneのロケーション
WEAZER西伊豆から歩いて5分ほどの場所にあるこの場所は、オーシャンビューはもちろんのこと、目の前はV字型の渓谷になっており、波音が聞こえる距離に海がある。隣の遊歩道を少し歩けば美しい海岸線が広がり、そしてその空間を独り占めできる贅沢な環境である。


加えて、南側を向けば、敷地内に渓谷や小川が流れ、海だけでなく山や森の景色も楽しむことができる。小川は普段は枯れていることが多いが、雨が降ると流れだし、川の流れの音やその景色がより全体の空間に潤いを与える。

ユニットではなく、在来建築WEAZERの開発
WEAZER1号機は「どこでも設置できること」により力点を置き、ユニット建築を採用したが、今回は特別な景観やロケーションを最大限楽しむことができるよう、通常の在来建築手法でWEAZERを建築し、贅沢な空間を作り込むこととした。
建築設計は日本の伝統と現代的感性を融合させる『SUPPOSE Design Office』が監修。150㎡の建築物と1,000㎡を超える敷地に、1日1組のみが滞在できる最上級のプライベート空間を実現。

海に面した水盤の中には、畳敷きの禅スペースを設けており、瞑想やヨガを自然の中で体験可能。日常から切り離され、深い静けさに身を委ねる時間を過ごすことができる。さらに敷地内にはサウナも設置されており、波音や鳥の声に包まれながら、自然の中で“ととのう”特別なひとときを提供する。

オフグリッド技術の更なる進化
電気や水といった人が生活・滞在する上で必要不可欠なモノを、太陽光や雨水等の自然のエネルギーだけで完全に自給することが、本製品の特徴であるが、今回のモデルにおいては、これらの機能に対し、ハード面、ソフト面双方で大きなバージョンアップを図った。
1.【ハード面】熱を軸とした省エネシステムの探求
現代において「エネルギー」と聞けば、多くの人は「電気」を思い浮かべる。
電気は遠方への輸送に優れ、エネルギーを消費する都市と発電所を結びつける役割を果たしてきた。その特性ゆえに、都市中心型の社会構造において極めて有効な存在であった。
しかし視点を変えれば、日常で消費される電気の多くは、空調・給湯・調理といった「熱」をつくり出すために費やされている。にもかかわらず、身の回りには地中熱や温泉熱、生活の放熱など、活かされぬまま廃棄される膨大な熱が存在している。この不均衡は長らく放置されてきた。
『WEAZER』が挑むのは、外部インフラに依存せず、太陽光や雨水といった自然の恵みをその場で生み出し、その場で消費する「地産地消型エネルギー」の実現である。ここで鍵となるのが、ARTHが開発した熱循環システム「Heat Circulation」である。

この仕組みは、生活から生じる温排水や空調排気、暖炉の熱を回収し、それらを暖房・冷房・給湯の熱源へと再利用する。通常の住宅では捨て去られる熱を再び循環させることで、電力消費を大幅に削減し、従来の住宅の約3倍に相当する省エネ性能を目指すことが可能となった。
また、その取り組みを更に進化させたのが、デュアルソースエアコンである。
通常の空冷エアコンは外気を利用して熱交換を行い、室内を冷暖房する仕組みである。一方、水冷エアコンは、暖房時には温排水の熱を、冷房時には地下水や雨水といった自然の冷熱源を用い、高効率な空調を可能とする。

WEAZERでは、この二つの方式を季節や利用シーンに応じて自動的に切り替えることができる。平常時には高効率な水冷エアコンを基盤として全体の約七割をまかない、夏冬のピーク負荷時には空冷エアコンを併用し、必要な分だけ熱交換を追加する。結果として、システム全体のCOP(成績係数)を飛躍的に高めることが可能となった。
この発想は、ハイブリッド車が「近距離はEVで効率的に、長距離や高負荷時にはガソリンを使い分ける」という仕組みに通ずるものである。水冷と空冷という“二つの心臓”を状況に応じて最適に切り替えることにより、常に高効率な運転を維持しつつ、負荷変動にも柔軟に対応する。これにより、オフグリッド環境における頑健性は大幅に高められた。
この熱循環技術とデュアルソースエアコンの導入によって、WEAZERはオフグリッドでありながらもサウナのような高エネルギー消費設備を備えることが可能となった。ハードとソフトを統合したエネルギーマネジメントによって、持続可能でありながら快適な未来の暮らしを実現する――それがこの革新的な試みの本質である。
2.【ソフト面】AI制御によるOff-grid HEMSの革新
ソフトの領域においても大きな開発を実行。これまでのHEMS(Home Energy Management System)の役割は、エネルギーの使用状況を「見える化」することにとどまっていた。しかし、外部インフラに一切頼らない完全オフグリッドの環境においては、単なるモニタリングでは不十分であり、より高度なマネジメントが不可欠である。
ARTHが独自に開発した「Off-grid HEMS」は、その答えとなる存在である。このシステムは、AIがエネルギー状況を自律的に判断し、制御にまで踏み込む点に最大の特徴を持つ。天気予報、宿泊者の人数や属性、さらには過去の消費履歴といった多様なデータをリアルタイムに解析し、未来の電力と水の生産量・消費量を予測する。もし翌日に天候悪化や需要増加による逼迫が予想されれば、AIは即座に空調や給湯の稼働条件を最適化する。こうして快適性を維持しながらも資源の枯渇を未然に防ぎ、オフグリッドの「頑健性」を飛躍的に高めている。
さらに、ユーザーインターフェースも進化を遂げた。発電状況や時間帯ごとの消費構造を直感的に把握できるだけでなく、「どれだけ環境に優しい暮らしを実現できているのか」が可視化されるようになったのである。利用者は数値に縛られることなく、自らの暮らしが環境に与える影響を実感しながら、楽しみとしてエコライフに取り組むことができる。
『WEAZER』のOff-grid HEMSは、単なる管理システムではない。それは自然の恵みを資源とし、AIが未来を見据えて制御する、新しい時代の住まいの頭脳である。


ディスティネーション・ステイという価値提案
WEAZER 西伊豆 廻は、滞在そのものを目的とする「ディスティネーション・ステイ」という新たな旅のあり方を提案する。一般的な宿泊施設では、15時にチェックインし翌朝11時にチェックアウトするのが常である。しかし、就寝時間を除けば実際に過ごす時間は半日にも満たず、食事や支度を考慮すると、建築や空間そのものを味わう余白は決して多くない。
本施設は、一日一組限定の完全プライベート空間である。その圧倒的な自然環境と建築空間、サウナや庭、各種アクティビティを余すことなく体感いただくため、従来の宿泊時間の枠にとらわれない、より自由度の高い滞在スタイルを構想している。
季節や時間とともに表情を変える海の景、鳥の声、波の音、風の香。自然を五感で感じながら、過ごす時間こそが、ここでしか得られない贅沢である。
WEAZER西伊豆 廻 にて、自然と建築空間、それを支えるテクノロジーが織りなす豊かな滞在を体感していただきたい。
Type | Type A |
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